登山する上で有益な情報を提供してくれるスマートウォッチ。筆者も数年前から登山の際にはスマートウォッチを持っていくようになりました。スマートウォッチの昨日の中でも地形図や登山地図をダウンロードして登山中でもいつでもみれるようになる機能は非常に重宝します。こうしたスマートウォッチを持つことで、地図やスマホを取り出さなくても現在位置を把握し、遭難を未然に防ぎやすくすることができます。
今回は数あるスマートウォッチの中でも、地図表示機能のあるスマートウォッチを中心に機能や性能を比較してみました。ご自身で購入する際の参考にしてください。(2024年1月時点)
地図が表示されるスマートウォッチがあると非常に便利
時計機能だけでなく、天気予測、心拍数計測、高度計、音楽再生など、スマートウォッチの機能は年々進化しています。これらの機能が私たちの日常生活に欠かせなくなりつつあります。
また、登山に特化した機能も大幅に向上しています。特にオフラインでの地図表示やGPSによる現在位置表示が可能なスマートウォッチは、登山の安全性を飛躍的に向上させています。
地図が表示されるスマートウォッチは、登山中に地図やスマートフォンを取り出す手間が省けます。予定されたコース上にいることが手元で確認でき、常に安全な範囲内で歩行することが可能です。これにより、登山中の安全性が向上し、利便性も向上します。
スマートウォッチに求める登山向け機能ごとに比較
登山で使用するスマートウォッチに求められる機能にはさまざまな要素があります。主に以下に挙げた5つの性能、機能に焦点を当て、Garmin Fenix 7 Pro、Apple Watch Ultra2、Samsung Galaxy Watch 5 Proの比較を行ってみました。
※性能や機能は主に各機種の公式HPを参考にまとめました。
・心拍数、標高、地図の表示
・バッテリーの持続力
・耐寒性、防水性
・GPS、地図の利用
・画面のサイズ、価格、事故発生時の対応
手軽に地図、標高、心拍数がわかる
登山中に欲しい情報を手軽に得ることは非常に重要です。スマートウォッチはスマホなどを取り出す手間を省き、生体情報や位置情報をリアルタイムで把握できるため、事故や遭難の予防に効果的です。
心拍数の把握は、適切なペースを維持するために不可欠です。異常に上がる心拍数は過度なペースでの登山を示す可能性があり、そのような状況を事前に把握できることは安全面で大きなメリットとなります。
一般的な登山用の時計は標高や心拍数の計測に対応していますが、地図表示の機能が加わると遭難のリスクをより低減させることができます。
Garmin Fenix 7 Pro | Apple Watch Ultra2 | Samsung Galaxy Watch 5 Pro | |
---|---|---|---|
天気予測 | あり | あり | あり |
高度計 | あり | あり | あり |
消費カロリー計測 | あり | あり | あり |
心拍数計測 | あり | あり | あり |
機能/性能に焦点を当てて比較すると、Garmin Fenix 7 Pro、Apple Watch Ultra2、Samsung Galaxy Watch 5 Proの3機種は、天気予測、高度計、消費カロリー計測、心拍数計測の面で違いがほとんどありません。これらの機能はどれも備えており、さらに地図表示の機能も含まれています。天気予測や消費カロリー計測の機能も、いずれの機種もしっかりと備わっています。
バッテリーが長時間持つ
バッテリー寿命は登山時において重要な要素であり、その違いはストレスを軽減させるかどうかに直結します。登山者は、バッテリーの心配なく機能を利用できることが望ましいです。もしバッテリーが切れてしまうようであれば当然その豊富な機能も使用することはできません。以下は3機種のバッテリー性能と関連するソーラー充電機能についての比較です。
Garmin Fenix 7 Pro | Apple Watch Ultra2 | Samsung Galaxy Watch 5 Pro | |
---|---|---|---|
バッテリー(通常) | 最大22日(ソーラー充電込み) | 約36時間(一般的な使用) | 最大80時間 |
バッテリー(GPS) | (ソーラー充電込み) | 約73時間約17時間 | 約20時間 |
ソーラー充電 | あり | なし | なし |
Garmin Fenix 7 Proは非常に長いバッテリー駆動時間を誇り、ソーラー充電機能も搭載されているため、登山中にバッテリー切れの心配がほとんどありません。一方で、Apple Watch Ultra2、Samsung Galaxy Watch 5 Proも通常の生活であれば十分なバッテリー駆動時間を提供していますが、特に長時間の登山を行う場合は充電の計画が必要です。
とはいえ、日帰りや1泊程度の登山が主の人であれば、どのスマートウォッチでも問題はありません。それぞれの特徴を踏まえ、ユーザーの体力や登山の傾向や予定に基づいて最適なスマートウォッチを選択することが重要となります。
寒くても濡れても動作する
雪山やスキーに行くと、思った以上にスマートフォンのバッテリーが早く切れてしまうことがあります。一般的に、スマートフォンの動作温度は0℃以上であるため、氷点下の気温ではバッテリーの持続時間が大幅に短くなります。通常、寒冷地ではスマートフォンを服の中に入れたり、保温バッグに収めるなどの対策が取られますが、腕に装着するスマートウォッチはそのような対策が難しいです。
当然ながら、スマートウォッチの動作温度についての確認も欠かせません。寒冷地での使用を考慮する際には、バッテリーの性能低下や操作の不具合が起きないようにするため、動作温度に注視することが必要です。
また、防水性も重要なポイントです。雪山やスキーなどの冷たい環境では、雪や水に触れる機会が増えます。このため、スマートウォッチが防水であることを確認することは、機器の耐久性や正確な動作を維持するうえで不可欠です。
これらのポイントを考慮して、3つのスマートウォッチの動作温度と防水性を比較してみると、以下のような結果となります。
Garmin Fenix 7 Pro | Apple Watch Ultra2 | Samsung Galaxy Watch 5 Pro | |
---|---|---|---|
防水性 | 100mまで防水 | 100mまで防水 | 50mまで防水 |
動作温度 | −20〜45℃ | −20〜55℃ | 0〜35℃ |
防水性については、いずれの機種も山岳での使用において十分な防水性を持っています。動作温度に関しては、Garmin Fenix 7 ProとApple Watch Ultra2は雪山でも問題なく使用できる広い動作温度範囲を備えています。一方で、Samsung Galaxy Watch 5 Proは雪山での使用は控えるべきかもしれません。
これらの情報を考慮して、登山やスキーシーズンにスマートウォッチを使用する際には、環境条件に合った選択を行うことが重要です。
GPS、地図は何を利用しているか
ガーミンやスントのスマートウォッチは専用の地図があります!
現在地を把握するために地図表示できるスマートウォッチを身につけてもGPSの性能が悪ければその価値も半減してしまいます。山での位置表示が数m分ずれるだけでも遭難のリスクが高まります。したがって利用できるGPSの数が多ければ多いほど、そうしたリスクを回避できます。
また地図は何を利用しているかについても確認しておきましょう。スマートウォッチは専用の地図を利用するもの、アプリを通して地図が利用できるものとあります。いずれも信頼性については問題ありませんが、専用の地図を利用する場合には別途費用がかかる場合もあります。
その点を比較した表が以下になります。
Garmin Fenix 7 Pro | Apple Watch Ultra2 | Samsung Galaxy Watch 5 Pro | |
---|---|---|---|
GPS機能 | GPS、GLONASS、GALILEO、みちびき | GPS、GNSS、Galileo、BeiDou | GPS,Glonass,Beidou,Galileo |
標準搭載地図 | 日本詳細地形図 スキーマップ ゴルフマップ | 登山系アプリと連携でマップ利用 | 登山系アプリと連携でマップ利用 |
地図利用のコスト | 日本登山地形図は別途 | 登山系アプリは別途 | 登山系アプリは別途 |
GNSS…全地球航法衛星システム。アメリカのGPS、ロシアのGLONASS、欧州委員会のGalileo、中国のBeiDouの4つの衛星システムを指す。
GPSにおいて、どの機種もGPS、GLONASS、Galileo、BeiDouなどの複数の衛星システムを利用しており、GNSSが利用できる時点で4つの衛星を同時に利用可能です。これにより、位置情報の正確性が向上し、遭難のリスクが低減します。
地図に関しては、Garmin Fenix 7 Proが日本詳細地形図を標準搭載しており、他の機種は登山系アプリや地形図アプリと連携することで地図を利用します。Garmin Fenix 7 Proでは日本登山地形図を別途ダウンロード(18,700円)する必要がありますが、その分詳細な地形情報を利用できます。
画面のサイズ、価格、事故発生時の対応
その他画面サイズや価格、事故発生時に対応する機能があるのかも調べてみました。最近では転倒を自動検知し、意識不明の場合には自動的に通報する機能を持つスマートウォッチも増えてきました。
登山では転倒、転落が原因で遭難につながる事故も多くあるため、これらの機能は安全性を大いに高めてくれます。
Garmin Fenix 7 Pro | Apple Watch Ultra2 | Samsung Galaxy Watch 5 Pro | |
---|---|---|---|
価格 | 10万円〜15万円 | 128,800円 | 6.5万円〜7.5万円 |
画面サイズ | 1.3インチ | 2.12インチ | 1.4インチ |
事故検知 | あり | あり | あり |
緊急連絡機能 | 緊急連絡先に通知 | 119番に通報 緊急連絡先に通知 | 緊急連絡先に通知 |
価格と画面サイズ
Garmin Fenix 7 Proは10万円から15万円、Apple Watch Ultra2は128,800円、Samsung Galaxy Watch 5 Proは6.5万円から7.5万円と価格帯に違いがあります。画面サイズはApple Watch Ultra2が2.12インチで最も大きく、Garmin Fenix 7 Proが1.3インチ、Samsung Galaxy Watch 5 Proが1.4インチです。
事故検知と緊急連絡機能
全ての機種が転倒や転落を検知し、事故発生時に自動的に通知または通報する機能を備えています。
Garmin Fenix 7 ProとSamsung Galaxy Watch 5 Proはメッセージを緊急連絡先に自動通信します。一方、Apple Watch Ultra2は119番への通報もします。ただし、国によっては衛星を利用した通報ができる場合もありますが、日本ではまだ対応していないようです。将来的には、衛星通信が可能になることでより安心なデバイスになるでしょう。
ここまでの比較を振り返って
ということでサイキがこれはと感じた地図表示できるスマートウォッチの中から3つ選んで性能を比較してみました。まず比較した表をみていただいて、その後それぞれのスマートウォッチについて検討していきます。
ここまでの比較内容のうち、違いが顕著な部分だけを取り出して改めて表にしました。3機種それぞれの違いを見ていきましょう。
Garmin Fenix 7 Pro | Apple Watch Ultra2 | Samsung Galaxy Watch 5 Pro | |
---|---|---|---|
価格 | 10万円〜15万円 | 128,800円 | 6.5万円〜7.5万円 |
画面サイズ | 1.3インチ | 2.12インチ | 1.4インチ |
バッテリー (通常) | (ソーラー込み) | 最大22日約36時間(一般的な使用) | 最大80時間 |
バッテリー(GPS) | (ソーラー込み) | 約73時間約17時間 | 約20時間 |
ソーラー充電 | あり | なし | なし |
防水性 | 100mまで防水 | 100mまで防水 | 50mまで防水 |
動作温度 | −20〜45℃ | −20〜55℃ | 0〜35℃ |
標準搭載地図 | 日本詳細地形図 スキーマップ ゴルフマップ | 登山系アプリと連携でマップ利用 | 登山系アプリと連携でマップ利用 |
地図利用のコスト | 日本登山地形図は別途 | 登山系アプリは別途 | 登山系アプリは別途 |
安心のGPSスマートウォッチGarmin Fenix 7 Pro
Garmin Fenix 7 Proは長らくGPSで登山者に愛用されているガーミンの最新スマートウォッチ。
今回の比較で最も目を引くのはバッテリーの長さです。ソーラー充電を含めれば、通常の使用で22日間連続使用することができます。さらに上級モデルの7X では37日間まで最大使用可能。通常の登山ではほぼバッテリーの心配がないのは非常に嬉しい性能です。
価格はそれなりに高いですが、動作温度も−20℃まで対応しているので、雪山を含め本格的な登山を考えている人には適している時計です。
なお、標準搭載されている日本詳細地形図に加え、「山と高原地図」63冊分のデータが入る日本登山地形図を使用するには別途費用がかかります。紹介ページはこちら
スマートウォッチの王者AppleWatchはアウトドアにも本格的に対応し始める
スマートウォッチの存在を身近な物にしたAppleWatchはこれまでバッテリーの動作時間が短いことと、動作温度の幅が狭いことからあまりアウトドア活動には向いていないように思われがちでした。しかしUltraシリーズの新製品Apple Watch Ultra2は動作温度−20〜55℃、バッテリー動作時間最大36時間(通常使用)と大幅にその性能を向上させました。
バッテリーの長さこそGarmin Fenix 7 Proに及ばないものの、普段使いとしてはこれ以上ないほど多彩な機能を持つものはありませんし、登山と普段使いのバランスを取りたい方にはこちらがおすすめです。
地図を利用する際にはヤマレコやYAMAPなどの登山系アプリをインストールし、該当する地図をダウンロードする必要があります。使用の際にはiPhoneが必須ですので、その点はご注意ください。
Appleは下取りサービスもあるので、それを利用すればより安く入手することも可能です。リセールバリューが高いのもApple製品の魅力です。
冬山にいくことがないのであれば候補に入るSamsung Galaxy Watch 5 Pro
使用温度が0℃以上なので雪山などでの使用は難しいですが、普段使いとしては十分な性能を持つSamsung Galaxy Watch 5 Pro。バッテリーの持続時間も最大80時間と、Apple Watch Ultra2を上回るバッテリー性能があります。こちらもWear OS by Google搭載なのでヤマレコをインストールすれば登山地図を表示させることができます。(YAMAPは使用できません)
さらに転倒検知、緊急連絡機能もありますので、今使用しているスマホがAndroidで、日帰り登山や1泊程度の登山をするなら、こちらの方がコスパが良いのかもしれません。
本当は紹介したかったCasio PRO TREK Smart
CASIOの地図表示できるスマートウォッチとしてCasio PRO TREK Smartは以前から知っていましたが、
調べてみると2020年で生産終了したとのことでした。詳しくはこちらのサイトで語られていますのでここでは割愛いたします。
現在でもAmazonなどで購入はできますが、生産終了しているものはいつ使えなくなるか分からないので、残念ながらちょっとおすすめはできません。
スマホによって使える登山系アプリに違いがある
スマートウォッチで地図を表示させるといっても、物によってその方法は異なります。ガーミンはあらかじめインストールされている地図ソフトや専用の地図ソフトをインストールして使用しますが、Apple WatchやSamsung Galaxy Watchはアプリをスマホにインストールして使用します。
登山系アプリは多くの選択肢がありますが、YAMAPについては多少注意点があるので解説します。
YAMAPは2023年でスマートウォッチ連携を終了している
登山者でも多くのユーザーがいるYAMAPですが、Androidへの対応は2023年で終了していました。つまりAndroid系スマホのユーザーはスマートウォッチで地図表示するにはヤマレコを使用するのが基本になります。iPhoneユーザーは問題なく使用できるそうです。
Apple Watch SE / Series 5以降(コンパス機能を利用できるApple Watch)で使用できます。
ヤマレコはiPhone、Androidいずれも使用可能
筆者も加入しているヤマレコはiPhone、Androidいずれも連携可能です。Androidユーザーの方はヤマレコ一択です。
Apple watchの場合、Series4以降で対応していますが、Series5以降(SEを含む)がおすすめです。
Wear OS by Googleが搭載されているスマートウォッチも使用できます。
まとめ
今回は地図表示できるスマートウォッチにはどのような種類があるのか気になって、それらを比較する記事を作成しました。実際作成してみるとスマートウォッチにも明確な違いがあるので面白いと感じます。
ガーミン、スントなどのアウトドア前提のスマートWatchは価格はかかるが性能は非常に高い
AppleWatchやSamsung Galaxy Watchなどの汎用性の高いスマートウォッチはコストが低い
正直なところ何日も山に籠るような登山は筆者は行かないので、Apple Watchで十分なのですが、それでもガーミンのような高性能なスマートウォッチには心惹かれるものがあります。普段のトレーニングにも有効な機能がたくさんあるので、購入する機会があればぜひ体験してみたいですね。
スマートウォッチをつけて登山したくなりますね!
皆さんの心惹かれるスマートウォッチはありましたか?それでは次の記事で!