登山用品のツェルトがどういったものか初心者の方は知らない方も多いかもしれません。緊急避難用のテントときいて普通のテントと何が違うのか、どんなときに使うのか、どのように使うのかわからない方も多いのではないでしょうか。
ツェルトは登山において場合によっては命を守ることにもつながる重要なアイテムです。これから登山を始めようとする方にツェルトの重要性や使う場面、おすすめのツェルトなどをご紹介していきます。またツェルトはベテラン登山者が荷物を軽量化する上で欠かせないアイテムともなりますので、その点も含めて解説を進めていきます。
ツェルトとは?初心者登山者にも必要な理由
登山やキャンプにおいて、ツェルトはとても大切なアイテムです。しかし、多くの初心者が「ツェルトとは何か?」「どんな場合に必要になるのか?」といった基本的な疑問を持っているのではないでしょうか。このセクションでは、ツェルトの基本とその重要性について紐解いていきたいと思います。
ちなみにツェルトはドイツ語でテントの意味ですが、日本の登山界隈では次のように使い分けます。
元々どちらも同じものを指す言葉なのですが、不思議ですね。
ツェルトの基本
ツェルトは、軽量で携帯性に優れたシェルター(避難所)です。主に非常時や、計画外の宿泊が必要になった場合に使用されます。素材は防水性に優れており、風や雨をしのぐことができる機能を持っています。一般的にテントよりも簡易的で、迅速に設置できるのが特徴です(練習は必要です)。
このツェルトのおかげで雨風から体を守ることができ、体を休ませて体力を回復させることができます。そのため事故など不足の事態に備えて、長時間の登山に赴く際にはツェルトを持っていくことが推奨されます。
どんな場面で必要になるのか?
天候の急変:山では天気が予測不可能な場合があります。突然の雨や雪に見舞われたとき、ツェルトは唯一の避難所になり得ます。天気の急変はどの季節でもどの山でも起きる可能性があります。
計画外の宿泊:想定外の遅延や、目的地に到達できない場合など、安全のためにその場で留まる必要が生じた時に使用します。ビバーク(野宿)に比べてよっぽど体力を回復させることができます。特に山小屋や避難小屋の間隔が広い山に入るときにはあった方がいいでしょう。
急な体調不良や怪我:急な体調不良や怪我を起こした場合に、体調が改善するまで休んだり、救助が来るまで待機することができます。
初心者でも持っていた方が良い理由
・初心者は自分の体力を見誤りがち
自分の体力を多く見積もってしまい、計画通りに進まないことはよくあります。それは初心者ほど起きやすく、場合によっては致命的な結果にもなり得ます。また過去に登山の経験があっても数十年のブランクがある場合にはより慎重であるべきです。ツェルトは非常時の安全確保のための最後の砦となり得ます。
私も10年ぶりに登山をしたときには両足が攣ってしまい、1時間ほど動けなくなったことがあります。しかも魔の悪いことに雷雨までありました。あのときツェルトを持っていれば…と今でも反省しています。
・どんな失敗をしても無事に帰る可能性を高める
自分の体力以外にも初心者ならではのミスは多くあります。持ち物を忘れたり、道迷いにあったり、足を挫いて動けなくなったり…山では予期せぬことが起き、そして誰かが助けてくれるとは限りません。ツェルトがあればそんな時でも体力を保持し、救助が来るまで時間を稼ぐことができます。
・山は無事に帰ることが何より大事
意外かもしれませんが、山を登る時のことは入念に計画しながらも、降るときのことまであまり考えていないことが初心者にはありがちなことです。実際疲労による転倒、事故などは降るときにおきやすいです。使わないことが一番ですが、自分に対する戒めの意味でも持っておくと良いでしょう。
UL化のためにテントの代用として使用する人も
最近では荷物をUL化(ウルトラライト:軽量化)させるために、テントの代用として使う人も増えているようです。筆者も興味がありますが、雪山にも使っている人がいることには本当に驚きです。(下のポスト)
久々のツェルト泊でした pic.twitter.com/pJ0A7iltDk
— もる (@moru26) April 2, 2022
そうすると、「じゃ最初からツェルトでいいのでは」と思われるかもしれませんが、テントとツェルトとでは居住の快適さは全く異なります。経験の多い人が自己責任において使用する分にはいいかもしれませんが、これから山を始める方がテントの代わりに使用することはおすすめできません。
まずは普通のテントで慣れてからにしよう!
登山初心者向け!おすすめのツェルト泊用品まとめ
ツェルトを選ぶポイントは緊急的な道具であることから、軽量であること、丈夫であること、なるべく早く設置できることが大切です。その上で命綱となるツェルトや関連用品を選んでいきましょう。
登山初心者におすすめのツェルトとは?
初心者向けにおすすめのツェルトはアライテントの「ビバークツェルト ソロ 1人用」です。ツェルトとしては安価で何より105gと軽く、ポンチョ型なので簡単に使用できます。ツェルトは設置する場所やロープの結び方など設営にテクニックが必要になる場合もあります。その点こちらのツェルトは非常におすすめです。もしもの場合は羽織るだけで体を守ることができます。
中級者の方であれば、同じくアライテントの「スーパーライト・ツェルト2 ロング」がおすすめです。重量は280gでやや重くなりますが、ロープを使用して広々と使用することができ、紐やポール、ストックも使えば簡易テントとして使うことができます。ベテランの方の中には夏山から雪山までこれで通す方もいるようです。
ツェルトの建て方はアライテントの方が詳しく解説してくださっているこちらの動画が一番わかりやすいので、リンクを貼っておきます。
ツェルトの設営・緊急時に備えて覚えておきたい使い方【アライテント広報担当の福永さんに教わる山のテントの基本】
ツェルト泊に必要なエマージェンシーシート
緊急時の保温や防水対策に役立つエマージェンシーシートですが、「SOL エマージェンシーヴィヴィ」は特におすすめ。透湿性はありませんが、90%というその反射率の高さで体温の保持に優れており、耐久性も高いため複数回の使用が可能です。重量は100gで、コンパクトに運ぶことができます。
ツェルトはその構造上、結露や隙間風を完全に防ぐことは難しく、思いの外夜が寒くなることもあります。こちらも合わせて所持していると良いでしょう。
ツェルト泊前提なら寝袋やマットもこだわりたい
ツェルトは緊急時の避難方法ですが、中には宿泊方法としてツェルトを選択する人もいます。もしツェルトでの宿泊に挑戦したい人は、体をしっかり休めるために寝袋やマットもこだわりましょう。
ツェルトは地面が露出することがほとんどです。いざというときには上からかぶるため、そのような構造になっています。そのためマット(の一部分)は地面に接着する前提で考えましょう。
軽量化を一番に考える人にはサーマレストの「Zライト ソルS」をおすすめします。重量290gで、折りたたみ型のマットなのですぐに使用できます。その分R値は若干低めですので、エマージェンシーシートなどで暖かさを確保しましょう。尺が足りない分はザックや防水サックなどで補います。※R値…マットの断熱性を表す
快適さと軽量さのバランスを取りたい方は同じくサーマレストの「ネオエアーXライトのサイズR」をおすすめします。厚さ7.6cmでR値4.5、重量370gと断熱性、軽量性に優れたマットです。やや値は張りますが、ツェルト泊に限らずアウトドア全般で快適な睡眠が取れるでしょう。ただ、空気封入型なので置く場所には十分注意してください。
寝袋は夏であればシュラフカバーでも耐えられる場合もありますが、冬季にはそれでは持ちません。寝袋の快適さは体力回復に大いに関わるので、十分に快適なものを選ぶ必要があります。
シュラフについてはこちらの記事で、詳しくご紹介しています。
ツェルトは帰ったら袋から出す!保管方法
ツェルトの説明書にも書かれていることですが、ツェルトは小さい袋に詰め込むように収納されているので、帰ったら使っていなくても、必ず広げましょう。折り目付近の防水性が落ちやすくなります。なおこれはテントやシュラフなども同様のことです。
また使用した場合は結露で間違いなく濡れるので、広げて乾かす必要があります。濡れたまま放置しているとそこがかびてしまい、防水性が落ちます。
さらに落枝などで簡単に穴が空きますので、応急用にリペアシートも持っていくと良いでしょう。テーピング用のテープでも構いません。
・帰ったら乾かす
・保管時は袋から出して広げておく
・リペアシートを持っていく
ツェルト泊のための安全な場所の選び方
ツェルトはポールやストックで立てたり、木にロープをくくりつけて設営しますが、移動させることはできません。そのため立てる場所が非常に大切です。以下はツェルト泊する上での条件です。
・吹きさらしの稜線は避ける(ツェルトが吹き飛ぶ)
・落雷・落石の恐れがある場所は避ける(安心して休めない)
・水はけの良い場所(水がたまる場所では休めない)
・なるべく風通しがよく、かつ強い風が吹いていない(結露がある程度防げる)
・なるべく平地で、設営のための場所が広くとれる(雨天時は傾いた方が良い)
上2つは必須条件です。安全面での場所選びはしっかりと判断しましょう。
まとめ
今回はツェルトの意味、使い方や使う場面、注意点など解説していきました。日帰りの登山でも急なトラブルに見舞われたとき、一旦立ち止まり体力を回復する機会をどこでも得られるということはとても大きなことです。
安全性を高めるためにもぜひ一つは持って山にいくようにしましょう。