「ワークマンは登山に使えるか」という疑問は、多くの登山者やアウトドアを趣味とする人たちの間で頻繁に浮上する話題です。実際ワークマンで揃えられるウェアなどは通常登山専門店で購入できるものに比べて、非常にリーズナブルな値段で購入できます。安い分性能がどこまで登山に使っていいものか不安な方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「ワークマンが登山に使えない」かどうかについて著者なりの結論とその根拠に加え、ワークマンの個々の商品について登山経験の長い著者が忖度抜きに3段階評価してみました。さらにより安全にワークマンをうまく登山に活用するために、どの装備に力を入れればいいのかアドバイスしたいと思います。
この記事を読めば登山初心者の方でも極力出費を抑えて、登山用品を揃えることができます。さらには基本的な登山の難易度についての知識も身につくでしょう。最後まで是非お読みください。
「ワークマンが登山に使えない」という議論について本気で考えてみる
ワークマンへのネガティブな意見として勝手にまとめると
— じょあ (@KSG2999) October 14, 2020
・冬山とかガチめのときに使えない
・ダサい
・気分がアガらない
・登山用ではないので選択肢に無い
て感じか
「ワークマンは登山に使えない」という意見を耳にすることがありますが、本当にそのように一言で断じてよいのでしょうか?
結論として私は「登山の難度や個人の経験、目的地の条件に応じて判断する」のが正しいと思います。
山の難度、時期、場所によって判断する
【剱岳の暴風雪(動画)】
— 富山県警察山岳警備隊 (@toyama_sangaku) March 4, 2024
本日(3/4)の早月尾根2600mの幕営地です。
秒速10m近い暴風雪に晒されて、テントを維持するのに苦労しています。
2張のうち1張は昨日のうちにテントを雪洞に入れていたため余裕がありますが、もう1張は頻繁に除雪を強いられています。#剱岳#暴風雪 pic.twitter.com/ymmiDoZMDx
登山では、目的とする山の難度が装備選びの大きな要因になります。低山の日帰りハイキングであれば、軽装備で十分な場合が多いですが、高山や雪山登山ではより専門的な装備が求められます。
また、季節による気候の変化も装備選択に大きく影響します。夏場の暑い時期には通気性と速乾性に優れたウェアが適している一方で、冬場や高山では保温性と防水性の高い装備が必要となります。
さらに、地域による気候の違いも無視できません。同じ国内でも地域によって気温や降水量が大きく異なるため、それらを考慮した装備が必要です。
いつでもワークマンが使えるわけでもないが、使える場面はあるのでどういう場面で使えるのか判断することでコスパよく装備を揃えることができます。
ウェアなどは使えるものが多くある
ワークマンのウェアには、登山に十分使える商品が多くあります。特に春夏秋の比較的温暖な時期の低山登山やハイキングでは、ワークマンのウェアは高いコストパフォーマンスを発揮します。例えば、通気性と速乾性に優れたTシャツや、軽量で動きやすいクライミングパンツで十分に快適な登山を楽しめます。
主にワークマンを好んで使う登山者は、耐久性と機能性を兼ね備えた商品をリーズナブルな価格で提供されていることに魅力を感じているのです。もちろんそれは登山初心者にとっても魅力的です。
ワークマンはダサい?
ワークマンが「ダサい」と評価されることがある背景には、その起源が作業服にあるため、長らく機能性を優先した設計に重点を置いてきたことが影響しているかもしれません。確かに、ファッション性を第一に考える人々にとっては魅力を感じにくい側面があります。
しかし、それでも登山者に人気があるということは、ブランドが持つ本質的な価値を示しています。登山は自己挑戦の場であり、自然を満喫する目的であるため、装備のファッション性よりも機能性や快適性が重要視されます。
昨年からワークマンはデザインにも力を入れ始めたことで、外見に対する意識も高まれば、ワークマンが「ファッションがダサい」というイメージから脱却し、より幅広い顧客層に受け入れられる可能性があります。
このように、ワークマンのイメージ変革は、登山やアウトドア活動をファッションも楽しみながら、安全かつ快適に行いたいと考える人々にとっては朗報と言えるでしょう。今後、「ワークマン=ダサい」という構図も変わっていくかもしれません。
テント、登山靴、ザックなどはさらに改善の余地がある
しかし、テントや登山靴、ザックなどの核心となる装備品については、まだ改善の余地があると言えます。
登山靴に関しては、足の保護、グリップ力、耐久性など、安全に直結する要素が重要視されます。また、テントやザックも登山の安全と快適性に大きく寄与するため、より専門性の高い製品を選ぶべきであることが多いです。
これらの装備品は一般的に高価であり、ワークマンのようなコストパフォーマンスを重視するブランドの商品では、厳しい環境下で期待される性能を満たせない場合があります。
結論として、ワークマンの製品が登山に使えないわけではありませんが、使う場面を選ぶ必要があります。特にウェアは多くの場面で活躍するでしょう。一方で、テントや登山靴、ザックといった核心的な装備品については、より高度な性能を求められる場面では、専門メーカーの製品を検討します。
ワークマンの製品を上手に取り入れつつ、登山の難度や個人の経験、目的地の条件に応じて装備選びをすることが、安全で快適な登山体験につながります。
登山にも難易度(グレード)がある
登山活動において、目的とする山やルートの難易度を正しく理解することは非常に重要です。一口に「登山」といっても、その範囲は近所の低山ハイキングから急峻な雪山まで広がっており、それぞれ大きく異なる技術や装備が必要となります。以下は、登山の難易度やその理解についてのポイントです。
難易度の異なる登山の種類
最も手軽なハイキングから始まり、樹木限界を超える高山登山、さらに雪山登山という形で、難易度は徐々に上がっていきます。
夏山と雪山の違い:夏山登山は相対的に危険が少ないとされていますが、雪山登山では雪崩や低体温症、遭難、事故のリスクが高まります。それに応じた装備と知識、技術が必要とされるため、雪山のほうが難易度が高くなります。
標高の違い:標高1,000mから2,000mの山域での夏山登山と、標高3,000mを超える高山や雪山登山では、自然環境が大きく異なります。高山病のリスクや気温の低下など、より高標高の登山の方が困難度が増します。
ルートの難易度:同一の山であっても、登山ルートによって難易度は大きく変わります。初心者向けの安全なトレイルから、経験豊富な登山者のみが挑戦するような技術的なルートまで、登山道の難度は多岐にわたります。
下記に各都道府県が公表している山のグレーディング表のリンクを貼っておきますので、これから登ろうとしているルートのグレーディングを調べておくと良いでしょう。
山のグレーディング(長野県のページがでますが、下の方に各都道府県のリンクがあります)
難易度に応じた装備の判断
登山の難易度に合った装備選びは、安全に登山を行うための鍵となります。特に厳しい条件の登山では、エントリーレベルの製品ではなく、信頼性と耐久性の実績がある高品質な製品を選択することが求められます。一方で、比較的容易なハイキングや低山登山では、ワークマンのようなコストパフォーマンスに優れたブランドの製品でも十分に機能する場合があります。結局のところ、登山の目的、難易度、そして個人の技術レベルと経験に基づいて、装備は慎重に選ばれるべきです。
ワークマンを過信せず、されど活用する
かつては作業着ブランドとして知られていたワークマンですが、今では価格と品質のバランスが良いアウトドア用品、特に登山にも適した製品を多数提供しています。それでは、ワークマン製品を登山においてどのように過信せずに、なおかつ有効に活用できるのでしょうか。
雪のない春〜秋に焦点を当てる
雪山登山は非常に特殊かつ厳しい環境であり、専門性の高い装備が必要です。そのため、ワークマンの製品を雪山登山に使用することは難しいように感じます。
しかし、春から秋にかけての雪のない山では、ワークマンの製品が非常に役立ちます。気候が穏やかであり、装備に求められる条件が厳しくないため、ワークマンのウェアやアクセサリーを効果的に使えるのです。
製品の品質向上に期待を寄せつつ選ぶ
ワークマンは、アウトドア製品の品質向上にも力を入れています。例えば、トレックシューズやインナーは毎年のようにアップデートされ、機能性やデザインが改善されています。
「ワークマン女子」というブランドを立ち上げ、女性にも受け入れられるようファッション性にも改善が加えられています。
このように、ワークマンでは年々製品のクオリティが向上しているため、今後の新製品にも期待が高まります。
ただし、最新の技術や厳しい環境に適した素材など、特定の需要に応えるためのハイエンドな製品を求める場合は、専門的なアウトドアブランド製品の選択を検討しましょう。
ワークマン商品を登山に使えるか3段階で評価
ここまで色々と解説しましたが、「結局どれなら使えるの?」という疑問にお答えするためワークマン商品を登山に使えるかどうかをざっくりと3段階で◎、◯、△の順に、厳しい環境でも使用できると評価しました。さらに過去にアップした関連する記事のリンクも貼りましたので、興味のある方はそちらもご覧ください。
あくまで「登山にどこまで使えるか?」という視点で評価していますのでご注意ください。
高評価◎
インナー:メリノウールや吸汗速乾性を備えたインナーは、高いコストパフォーマンスを提供します。しかし、成分比率のチェックは必ずしましょう。綿100%のインナーでは基本的に汗が乾きにくく登山中に着替える必要が出てきます。
グローブ・手袋:グリップ力に優れた製品が多く、一定の登山活動に役立ちます。価格も非常に低く設定されており、さまざまな作業に活用されてきただけあって信頼できます。ただし、クライミング用としての使用は保証されません。
クライミングパンツ:速乾性、撥水性、ストレッチ性に優れるものが多数あります。種類も豊富で機能も多く、安いものは1900円からあります。ただし綿100%のクライミングパンツもありますので購入の際には注意しましょう。
スパッツ(レギンス):コンプレッション機能を含むものもあり、一部登山用スパッツと比較して代用可能です。レギンスにかなりの補助機能を必要とする方でなければ十分に代用可能です。
帽子:撥水、紫外線カット、防臭など、多機能な製品が揃っており、ワークマンで十分性能が高いものが用意できます。
中評価◯
靴下:厚手のものは春夏にはあまり販売されておらず、メリノウール100%など良いものもありますが、場合によっては重ね履きが必要です。秋冬には厚手のものも販売されていますが、雪山に使うにはやや厚みが足りません。
雨具・レインウェア:透湿性に優れた製品もあるものの、究極の防水性を求める場合はゴアテックス製のものを購入しましょう。やや薄手に感じる部分もあるので、防寒性はあまり期待しない方が良いでしょう。
低評価△
登山靴・トレッキングシューズ:低山用途では十分な場合が多いものの、本格的な登山やトレッキングには不安要素が残ります。新型トレックシューズの評価待ちです。
軽くて歩きやすいですが、ソール部分の耐久性など心配する声もあります。
テント:機能としては充分ですが、重量面・サイズ面で登山向けではないと感じます。基地キャンプ用としての用途に限定されるかもしれません。
寝袋:登山での最低使用温度−6℃に届くものが少なく、重量と価格のバランスで登山用と比較する必要があるでしょう。キャンプ用としては充分な性能です。
ザック:耐久性に課題があり、重装備を運ぶには向いていない可能性が指摘されています。将来的な改善に期待しましょう。
ワークマンの登山用製品は、特に費用対効果を重視する登山者にとって有益な選択肢を提供しています。ただし、特定の製品についてはその性能や用途を十分に確認し、必要に応じて他の登山専門ブランドを活用しましょう。
何より登山は安全に下山することを目標とするべきです。
【高山や難度の高い登山】「核心的な」装備は良いものを揃える
登山活動において、装備の選択は安全性と快適性を確保する上で極めて重要です。家計に優しい選択をしつつも、リスクを最低限に抑えるためには、どの装備に投資するべきかを知ることが必要です。
特に高山や難度の高い登山に挑戦する場合、以下のような「核心的な」装備には妥協せず、質の良い製品を選択しましょう。
登山靴
足の保護、グリップ力、耐久性が求められます。足元が不安定だと転倒や捻挫の原因になり、場合によっては登山を中止せざるを得なくなる可能性もあります。
登山で最も重要な装備であるため、長時間登るような登山ではしっかりとした登山靴を揃えることをお勧めします。
ザック(バックパック)
重い荷物を効率良く運ぶためのサポートとして重要です。適切なフィッティングと耐久性は長時間のトレッキングの快適性に直結します。
ベルトが締められなかったり、背中がうまく合わなかったり、荷物がうまくパッキングできないだけでも非常に疲れやすくなるので、良いものが揃えられるならそれに越したことはありません。
ヘルメット
落石や転倒時の頭部保護に不可欠です。特に岩場の多いルートや、他の登山者が多く落石のリスクが高まる場所では必須です。
安全性という意味ではワークマンでも通用しますが、重量や通気性などでは登山用としてはやや向いていません。
テント
複数日にわたる登山では、過酷な環境から体を守る避難所となります。耐候性、耐水性、そして軽量性、コンパクト性が求められます。
1kg増えるだけでも重量が増えると登山の難度がかなり上昇します。軽量で丈夫なテントはやはり値がかかります。
寝袋(シュラフ)
体力の回復には欠かせません。使用する環境の気温に応じて適切な温度範囲のものを選ぶ必要があります。夏でも高山では非常に温度が低下しますので、最低使用温度−5℃程度は欲しいものです。重量を犠牲にすればワークマンでも揃いますが、やはり少しでも重量を減らしたいのであれば、専用のシュラフを求めることになります。
これらの装備に関しては、安全性、耐久性、そして機能性を重視して、信頼できるメーカーの製品を選んだ方が良いでしょう。
一方で、ウェア(例:インナー、フリース)など、比較的リスクの低いアイテムについては、ワークマンのようなコストパフォーマンスに優れたブランドで賢く節約することが可能です。
節約と安全のバランス
登山においては、コストを抑えつつも安全を最優先するバランスが重要です。核心的な装備に質の良い製品を選ぶことで、安全性を確保することができます。
そして、その他のリスクの低いアイテムについては、ワークマンのような価格と品質がバランスの良いものを選ぶことで、全体の装備コストを抑えることができるのです。
賢い選択を通じて、登山の趣味をより持続可能で楽しいものにすることができます。
まとめ
登山は多くの魅力を持っていますが、その安全性と楽しさを保つためには適切な装備が不可欠です。ワークマンの製品を含め、さまざまなブランドから出されているアイテムの中から、自分にとって最適なものを選択するには、予定している登山の条件や自己の技術レベルを正確に把握することが大切です。
状況に応じてワークマンを活用しよう:計画している登山の難易度と自分のスキルレベルを基に、ワークマンの製品を利用するかどうかを判断しましょう。ワークマン商品は特に低山ハイキングや初心者向けの登山に適していますが、高難易度の登山や雪山での活動に関しては、より品質の高い商品を選びましょう。
装備をコストパフォーマンスよく利用しよう:極端な思考にとらわれず、利用できるものはうまく活用して、登山の費用節約を図りましょう。核心的な装備には投資し、その他はコストパフォーマンスの良いものを選ぶことで、全体のバランスを取ることができます。
知識を積み重ねよう:購入する際は、商品の材質や機能性、耐久性といった要素にも注意を払い、情報を集め、知識を深めることが大切です。装備に関する知識だけでなく、山や自然環境、人体に関する理解も深めることが、より安全で楽しい登山につながります。
登山は体力だけでなく、装備や自然環境、人体の知識も同様に重要です。これらの知識を積み重ねつつ、適切な装備を揃えていくことで安全に、かつ経済的に山を楽しむことができます。
ワークマンの商品を使う使わないにかかわらず、色々な商品の性能を比較した上で適切な装備を揃えていきましょう。
今回の内容を動画にしました!(まだまだ動画作成の勉強中なので、暖かい目で観てください)